2015年 10月 18日
受験勉強をしていた高校三年の夏に、東京から姉が友達を連れて帰って来ました。 テレビ業界で働いていた姉の友人は、かなりな巨匠ディレクターでした。その方が 自分の娘はこういう学校に行かせたいな、と言われた学校は聞いたことのないところ。 私の高校には資料が無くて、一人の卒業生も居ませんでした。それが良かった。 滑り止めに受けたその学校に私は通うことになりました。 文芸学部芸術学科西洋美術史コース 就職活動するときには何の役にも立たないような学科でしたが、私はここで4年間を楽しく学びました。 今でも深く付き合っている友達が三人残っています。 絵を描くことは好きだったけど、観ることはときどき面倒くさいことがありました。特に西洋の絵には聖書を理解しないと読み解けない絵が多くありました。ただ観て心地よいとか嬉しくなるとか薄気味悪いとか色が不快だとかそういうことだけでは片付かない、訳が分からないのだけれど力強くていい絵もあったのです。 そんな時に読んだ「分かりやすい聖書」だったかなんだか、小学生向けの聖書物語。なるほど、あのシーンはこういうお話だったのか、と紙芝居を観るように謎解きが始まって行きます。 そして手にした「西洋絵画の主題物語Ⅰ聖書編」監修:諸川春樹・・・・・何度も登場してきますね。 その本に出てきた「聖十字架伝説」 抜粋します・・・・・・ アダムは楽園を追放される時、原罪を生むもとになった智恵の木の一枝を持ち去った。その後シバの女王がソロモンを訪れた時に渡ろうとした橋がこの木で作られていた。ソロモンはその木を地中に埋める。ここまでの木の運命は旧約の世界に対応する。実はこの木がキリスト磔刑の木材になった。それは人知れず再び地中に埋められる。ローマのコンスタンティヌス大帝は夢告によって軍旗に十字架を印し、宿敵マクセンティウスに勝利した。その母ヘレナはエルサレムでついに十字架の木材を発見した。さらに十字架はペルシャ王コスロエス2世に奪われるが、東ローマ皇帝ヘラクリウスがペルシャを破ってこれを奪回、十字架はエルサレムに永遠に戻った。聖なる十字架の称賛をもってこの数奇な物語は終わる・・・・・・・・ こんな面白い話があったら、テレビの無い時代に人々は紙芝居のようにこの絵を楽しみに見たでしょう。 そんな面白い絵があるんだあ、ってどこに?誰が描いた? それが、ウンブリアとの境に近いトスカーナの小さな町Arezzoにあることが分かりました。 それとは知らないで観た「イングリッシュ・ペイシェント」、看護師役のジュリエット・ビノシュが傷ついたイギリス人を運ぶ途中の町でターバンを巻いた軍人に惚れられてある晩デートに連れ出される。体にロープを巻かれランタンを持って引き上げられるとそこに映し出されたのがピエロ・デッラ・フランチェスカの描いた「聖十字架伝説」でした。 その絵があの絵だ!と分かるまでに少し時間がかかりました。劇場で観た時には気づかなかったけど、テレビで放映された時あの壁画だと分かったのです。 もうひとつの映画「ライフ イズ ビューティフル」の舞台になったのがアレッツォ。このグランデ広場の向こうの路地から自転車に乗ったロベルト・ベニーニが家族を乗せてすごいスピードで坂を下りてきました。 いつか行く きっと行く 絶対行く そんなArezzoでした。 Arezzoだけホテルに泊まりました。 駅から歩いてもすぐ Hotel Portici ☆☆☆☆ ちょっと終わってる感じはしたけどスタッフはみんな親切でした。Booking.comでFirenzeのB&BやローマのB&Bより安かった。 夜ごはんはホテルの真ん前にあった小さなレストラン。 チキンサラダとニョッキはヴォリュームがあって、それにグラスワインを一杯づつでお腹いっぱい。私たちの胃はどれだけ小さいんだ。 このごろはどんな田舎でも英語が通じるから嬉しい。 朝食はいつもの甘ったるいイタリアの朝ごはん。 ホテルの前のブロックはおしゃれなお店が並んでいました。 素敵なニットもあってもっと写真撮りたかったけど遠慮してしまいました。 刺繍の素敵なコート ホテルの斜め前くらいの路地を入ってすぐの左側にあったCAFE’ PARISは、若者に受けたおしゃれなカフェ。 ビスコッティもクロワッサンも新しい感覚のおいしさでしたよ。 Arezzo いいところです。
by yumiyane
| 2015-10-18 21:52
| Italy
|
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Comments(8)
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mai_obachan at 2015-10-18 22:51
縁は人とだけじゃないですね。芸術作品ともだし、土地とも。
お姉さんの友人が持ってきた縁もすごかったですね。全てが繋がっているみたいで、人生の不思議みたいなものも感じます。
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sfarina at 2015-10-19 11:04
芸術三昧の4年間だったんですね!
AREZZO、最近は仕事でしか行ってなくて観光も全くできてませんが、いいところですよね。 アンティークの市も有名らしく、次回はそれを見てみたいんですが。 お、イタリアのホテルとしてはいい方の朝食ですよね、コルネットがいい感じです!クロスタータもあるし♪ 過ごしやすそうな気温そうですね、良かったですね。
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rumikoh
at 2015-10-19 11:25
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プロテスタントのミッションスクールで育った私は聖画にはなじんで来ましたが
ヨーロッパの美術館で見た本物の聖画に驚かされてきました。自画像や奥様や依頼者の 肖像画が隠されていることなども含めてですが、、 大学4年生の時初めてパリを訪れて カルチヤーショックを受けました。 カトリックの偶像的なきらびやかな宗教からの脱却としての新教と教えられてきたのですが 日本の寺院となんら変わりないろうそくや きらびやかな銅像たちに、日本の伝統的な宗教と キリスト教に初めて同質のものに遭遇してしまったのでした。 それが 文学とキリスト教 東洋とフランス文学との比較のようなわたしの卒業論文のテーマとなりました。 道半ばで研究者としての道は投げ出してしまいました。 yumiyaneさんの専門が西洋美術史だったとは存じませんでした。 アルチュールランボーを研究していましたが アムステルダムで偶然ランボーがベルレーヌに 襲われた元ホテルや ベルレーヌが収監された監獄跡を観光中に発見してびっくりしました。
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yumiyane at 2015-10-19 21:24
:maiさん、こんにちは。
縁といえば出雲です。小さいころから出雲大社の元でご縁ご縁と言われて育ったせいでしょうか、老後をどこで過ごそうかと日本のあちこちを考えましたが、やはり出雲へ戻りました。 ここを訪れて下さる私との縁を持たれた方、この地を縁のある場所と思っていただけています。 そんな私は、イタリアへスペインへフランスへと縁を求めて旅に出ます。 maiさんにもきっといい縁を感じてもらえる場所として、いつか出雲にも来てくださいね。
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yumiyane at 2015-10-19 21:59
:sfarinaさん、こんにちは。
そんなことなかったかそうだったか、もう忘れてしまいましたね。 アルバイトはさせてもらえなかったし、部活も美術部に入っていたから、きっとそうだったかもしれない。ゼミの先生はいい先生がいらして、でももっと一所懸命やれば良かったなって卒業のときには思いました。 Arezzoには24時間くらいしか居なかったから、もっとゆっくりいろんなとこ見たかった。でもサンセポルクロとモンテルキに行けたのはラッキーでした。 いいな、Arezzoとかいろいろ行けるんだね。
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yumiyane at 2015-10-19 22:03
:rumikohさん、こんにちは。しばらくです、お元気ですか。
そうでしたね、フランス文学でしたね。 偶然旅で出会うのもいいかもしれませんね。勉強していらしたからこそその偶然が驚きになるわけで。今度ゆっくりその衝撃のお話を聞かせてくださいね。 私の場合は、宗教の勉強は無くしての美術史の勉強でしたから。面白いところばかり抜き出して観て回っている不信心ものです。
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at 2015-10-24 17:53
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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yumiyane at 2015-10-25 20:27
:鍵コメgさん、こんにちは。
お忙ししそうな様子はFacebookで拝見していましたよ。忙しさの始まりにお邪魔したのですね。もう一段落なさったのでしょうか。 よい結果が出たとのこと、楽しみですね~~私たちの頑張った分も役に立ってたら嬉しいな。 友人にもしかと伝えます。 アドレスは会社のだったのかな?少し前に削除しましたのでね。 出雲も寒くなりました。今度会える時に暖かくなるもの渡したいな。 |
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